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NCAAのEligibilityルール変更で、アメリカ大学テニスはどう変わるのか

1 分前
読了時間: 13分

最初にお断りしておきます。

この記事では、NCAAのEligibility(競技資格)に関するルール変更について、NCAAが公表している内容をもとに事実を説明した上で、後半では、長年日本人選手のアメリカ大学進学をサポートしてきた私自身の考えを書いています。

制度そのものの説明と、「この制度によって今後College TennisのRecruitingがどう変わるのか」という私個人の見方は、分けて読んでいただければと思います。

私は今回の変更が、これからアメリカ大学テニスを目指す日本人選手にとって非常に大きなものになると考えています。

NCAA Division I・IIのEligibilityが大きく変更


これまでNCAA Division Iでは、基本的に「5年間の中で4シーズン競技できる」という考え方でした。

Division IIでは「10 semesters / 15 quartersの中で4シーズン」という仕組みでした。

これが新しいAge-Based Eligibility Modelでは、Division I・IIともに原則として「連続した5年間のEligibility Period」という考え方に変わります。

大きなポイントは、従来の「4 Seasons of Competition」という上限がなくなることです。

ただし、よく言われる、

「今まで4年間だったEligibilityが、単純に5年間になった」

という理解だけでは正確ではありません。

新制度では、その5年間のEligibility Periodが「いつスタートするのか」が非常に重要になります。

5年間のEligibilityはいつ始まるのか


原則として、

① 初めて大学・短大などにフルタイムで在籍し、授業に出席した時

または、

② 19歳の誕生日後、NCAAルールで定められたacademic yearが始まった時

の早い方から、5年間のEligibility Periodが連続して進みます。

この5年間は、試合に出なかったから止まる、大学を休んだから止まる、Transferしたからリセットされる、というものではありません。

原則として時計はそのまま進み続けます。

また、Fall 2027以降に初めて大学へフルタイムで入学する選手については、この新しいAge-Based Eligibility Modelが適用されます。

「大学を5年間卒業できない」という意味ではない


この制度について話をすると、

「大学を卒業する時期が1年遅くなるのですか?」「就職の時期が遅れるのですか?」

と考える選手もいます。

もちろん、そういう意味ではありません。

4年間で卒業しても構いませんし、5年間大学に在籍しなければならないという制度でもありません。条件を満たしていれば、その5年間のEligibility Periodの中で競技することができる、という考え方です。

したがって、対象となる選手の場合、大学4年目で必ずCollege Tennisを終了しなければならないわけではなく、5年目も競技できる可能性があります。

一方で、旧制度ですでにEligibilityを使い切ったすべての選手に、自動的にもう1年が追加されるという意味でもありません。

高校卒業後すぐ大学へ行かない選択肢も変わる


ここも今回の変更で重要なポイントです。

例えば高校卒業後、すぐに大学へ進学せず、ITFなど一般の大会に挑戦してから大学進学を考える選手もいます。

新制度では、従来のDelayed EnrollmentやSeasons of Competitionに関する仕組みから大きく変わり、基本的には年齢と最初の大学フルタイム在籍時期によってEligibility Periodが決まります。

そのため、高校卒業後に1年間一般大会やツアーに挑戦し、その後大学へ進学する、という選択肢も考えられます。

ただし、ここで大きな注意点があります。

「24歳までプロ活動をして、その後大学に入れば、そこから5年間プレーできる」

という制度ではありません。

19歳以降は、大学に入学していなくてもEligibilityの時計が動き始める可能性があります。

つまり、大学進学を遅らせれば遅らせるほど、大学入学後に残されているEligibility Periodは短くなる可能性があります。


「プロ選手も大学に来られる」の意味には注意が必要


2026年にはDivision Iで、大学入学前のPrize MoneyやAgentに関するルールも大きく変更されました。

大学入学前に競技成績に基づくPrize Moneyを受け取ることや、一定の条件のもとでAgentと契約することについても、以前より柔軟な制度になっています。

そのため、高校卒業後すぐに大学へ進学せず、ITF Men's / Women's World Tennis Tourなど一般の大会を中心に活動し、その後アメリカの大学へ進学するという選択肢は、以前より現実的になってきています。

ただし、これは、

「プロとして何をしていても、その後無条件でNCAAに出場できる」

という意味ではありません。

まず先ほど説明したように、新しいAge-Based Eligibility Modelでは、大学に入学していなくても年齢によってEligibility Periodの時計がスタートする可能性があります。

例えば、大学へ行かず数年間ツアーを回ってから大学へ進学しようとしても、その間Eligibilityの時計が止まって待ってくれているわけではありません。

また、Athletics Eligibilityは年齢だけで決まるものでもありません。

Academic requirements、NCAA Eligibility CenterでのCertification、大学そのもののAdmission Requirements、そして実際に行っていた競技活動など、複数の条件を満たす必要があります。

さらに、Prize MoneyやAgentに関するルールが緩和されたからといって、大学入学後も一般のプロ選手とまったく同じ条件で自由に活動できる、という意味でもありません。

したがって、

「プロ活動をしたらNCAAには行けない」

という従来のイメージも正確ではなくなっていますが、

「プロなら何をしていても、その後いつでもNCAAに入って5年間プレーできる」

という理解も間違いです。

特に高校卒業後に一般大会やプロツアーを中心に活動してからアメリカ大学進学を考える場合は、自分だけで判断せず、事前にEligibilityへの影響を確認することが非常に重要です。


Transfer Portalによって大学間の移動も変わった


もう一つ、現在のCollege Recruitingを考える上で無視できないのがTransfer Portalです。

Division Iでは、Transferを希望する選手が所定のNotification of Transferの手続きを行うと、大学側が選手の情報をNCAA Transfer Portalに登録します。

原則として、他のDivision I大学のコーチがその選手とRecruitingについて接触するためには、この手続きを経る必要があります。

以前のように、現在所属している大学のコーチから一校ずつPermission to Contactをもらうという考え方とは大きく変わっています。

ただし、Portalへ入れる期間はスポーツによって異なります。

テニスはSpring Sportに該当するため、現在のDivision Iルールでは、原則として12月1日〜15日、またはNCAA Championship Selection後に始まる所定の期間にNotification of Transferを行います。

つまり、「毎年5月初旬が一律の解禁日」というわけではなく、年度のChampionshipの日程などによって実際の日付は変わります。

Transfer Portalの存在によって、大学コーチは高校生だけでなく、すでにCollege Tennisを経験している選手もRecruitingできるようになっています。


ここからは私個人の意見です


ここから先は、NCAAの公式見解ではなく、長年アメリカ大学テニスへの進学をサポートしてきた私自身の考えです。

私は今回のEligibility制度変更には、基本的に反対です。

もちろんメリットもあります。

怪我などによって十分に競技できなかった選手や、大学生活の中でもう一年競技を続けたい選手にとっては、選択肢が広がります。

また、高校卒業後に一般大会などへ挑戦してから大学進学を考える選手にとっても、以前より柔軟性のある制度になった部分があります。

そしてCollege Tennis全体の競技レベルは、さらに高くなる可能性があります。

しかし、日本の高校生をアメリカの大学へ送り出す立場から見ると、私は大きな問題もあると感じています。


2027年入学組から「ライバル」の考え方が変わる


これまで高校生が大学Recruitingを考える場合、主な競争相手は同年代の高校生でした。

しかし現在はTransfer Portalがあります。

すでにCollege Tennisで実績を残している大学生がTransfer市場に入ってきます。

さらに新しいAge-Based Eligibility Modelによって、5年間のEligibility Periodの中で競技を続ける選手が増える可能性があります。

そして、大学入学前にITFなど一般大会で経験を積んでからCollege Tennisへ入ってくる選手も考えられます。

つまり、2027年以降に大学を目指す高校生にとって、Roster Spotを争う相手は必ずしも同学年の高校生だけではありません。

大学コーチ、特にトップレベルのプログラムが求めるのは「入学した時点ですぐに戦力になる選手」です。

例えば、

18歳でジュニア大会を中心に戦ってきた選手

と、

高校卒業後にITFなど一般大会で1〜2年間経験を積んだ20歳前後の選手

が同じRoster Spotを争うことも考えられます。

もちろん必ず年上の選手が選ばれるわけではありません。

しかし、すでに一般カテゴリーで結果を残している選手は、大学コーチにとって「College Tennisでどのくらい戦えそうなのか」を判断しやすい選手でもあります。


5年目の選手がRosterに残る可能性もある


さらに、新制度では条件を満たしていれば5年間のEligibility Periodの中で5年目も競技できる可能性があります。

そうなれば、本来なら4年目でCollege Tennisを終えると思われていた実績のある選手が、もう一年チームに残るケースも考えられます。

もちろん全員が5年目まで残るわけではありません。

しかし大学コーチが、

「実績のある5年目の選手を残す」

「Transfer PortalからCollege Tennis経験者を取る」

「一般大会で実績のあるIncoming Playerを取る」

という複数の選択肢を持つようになれば、高校から直接入ってくるFreshmanのRoster Spotは以前より競争が激しくなる可能性があります。

私は、日本人高校生にとってNCAA Division I・IIへの門は、以前より狭くなる可能性が高いと考えています。


私がこの制度に反対する理由


私が長く見てきたアメリカのCollege Sportsには、「Student-Athlete」という非常に大切な考え方があります。

Athleteである前にStudentである。

大学で学びながら、大学を代表してスポーツをする。

もちろんCollege Sportsのレベルが上がること自体は悪いことではありません。

しかし、Eligibilityの仕組みや大学入学前のPrize Money・Agentに関するルールが変わり、より高いレベルで競技してきた選手がCollege Sportsへ入りやすくなれば、College Tennisの性格そのものも変わっていく可能性があります。

高校時代からAcademicとTennisを両立し、一生懸命準備してきた18歳の選手が大学でプレーするチャンスを得にくくなるのであれば、私はその方向性には賛成できません。

これはあくまで私個人の意見です。


では、日本人選手はどうすればいいのか


ルールに賛成か反対かにかかわらず、決まったルールの中で進学を成功させなければなりません。

そのため、私はこれからアメリカ大学を目指す日本人選手には、今まで以上に早く準備してほしいと思っています。

① まず英語を早く準備する

最も重要なことの一つが英語です。

テニスの実力が十分にあって大学コーチが興味を持ってくれても、DuolingoやTOEFLのスコアが大学のAdmission Requirementから大きく離れていれば、Recruitingを進められないことがあります。

できれば年内には、少なくとも大学コーチと具体的な話を進められるレベルまで英語スコアを上げておきたい。

Recruitingの競争が激しくなればなるほど、

「テニスは十分だけれど、英語が上がるまで待ちましょう」

と言っている間にも、他の選手でRoster Spotが埋まっていきます。

自分に興味を持ってくれる大学があり、Academic、Tennis、Scholarshipなどの条件が合うのであれば、以前以上に早めに決断することも重要になってくると考えています。


② ジュニア時代から一般大会にも挑戦する

もう一つ、これから非常に重要になると私が考えているのが「ジュニアの枠を超えた実績」です。

もちろんITF Juniorのランキングや全国大会、Junior Grand Slamなどの実績は大切です。

しかし、大学コーチ、特にトップレベルの大学が最終的に知りたいのは、

「この選手がCollege Tennisに入って、すぐに勝てるのか?」

ということです。

その判断材料として、一般の選手を相手にどのくらい戦えるのかという実績は非常に大きな意味を持ちます。

だからこそ私は、年齢やレベルが許すのであれば、日本人選手にもジュニア時代から一般大会へ積極的に出場してほしいと思っています。

大学生、社会人、プロを目指している選手など、ジュニアではない相手と戦い、そこで実績を作る。

それは大学コーチに選手を紹介するときにも、大きな説得力を持つ材料になります。


③ 「Junior Grand Slamに出た」だけでは十分ではない時代へ

少し厳しい言い方になります。

例えばAustralian Open Juniorの予選に出場することは、もちろん素晴らしい実績です。

そこまで到達するために必要な努力を否定するものではまったくありません。

しかし現在のCollege Tennis Recruitingを考えれば、

「Australian Open Juniorの予選に出場した」

という実績だけで、トップレベルのアメリカ大学から高い評価を受け、Recruitingが決まるとは限りません。

Junior Grand Slamに出場したかどうかだけではなく、

「一般の選手と戦ったらどのくらい強いのか」

「大学に入った時点ですぐLineupに入れるのか」

「College Tennisで勝てるだけの力があるのか」

ということも大学コーチは見ています。

特にRecruitingの比較対象に、ITF Men's / Women's World Tennis Tourなど一般カテゴリーで実績を持つ選手や、すでにCollege Tennisで結果を残しているTransfer選手がいれば、ジュニアの実績だけで比較することは難しくなります。

ジュニアランキングを上げ、Junior Grand Slamの予選出場ラインに到達すること自体にはもちろん価値があります。

しかし、

「Junior Grand Slam予選出場=トップ大学からRecruitされる」

というほど単純ではなくなっています。

大学コーチが最終的に判断するのは、その肩書きだけではなく、

「この選手が自分たちのチームで実際に勝てるか」

だからです。


④ アメリカ大学を目指すなら「ジュニアの枠を超えた実績」を作る

これからアメリカ大学を目指す選手には、ジュニアランキングだけを追いかけるのではなく、

「18歳になった時、自分は一般の選手を相手にどのくらい戦えるのか」

という視点を持ってほしいと思います。

ジュニア大会で結果を残す。

UTRを上げる。

ITF Juniorにも挑戦する。

そして同時に、一般大会にも積極的に出場する。

そこで大学生、社会人、プロを目指している選手などと戦い、結果を残す。

例えば大学コーチに選手を紹介するとき、

「Junior Rankingはこのくらいです」

だけではなく、

「一般大会でこのレベルの選手に勝っています」

「大学生を相手にこれだけの結果を残しています」

「ITF Men's / Women's World Tennis Tourでこのレベルの相手と戦っています」

と説明できれば、コーチにとってその選手の実力を判断する非常に大きな材料になります。

これからのCollege Tennis Recruitingでは、

「ジュニアで何位だったか」だけではなく、

「ジュニアの枠を超えた時にどれだけ戦えるのか」

が今まで以上に重要になると私は考えています。


⑤ 最初の大学が「最後の大学」でなくてもいい

そして、もう一つ考えてほしいのがTransferという選択肢です。

高校卒業時点で、自分が第一希望としていた大学からOfferをもらえなかったからといって、アメリカ大学進学そのものを諦める必要はありません。

まず、自分を評価してくれる大学へ行く。

そこでCollege Tennisの実績を作る。

英語を話せるようになる。

Academicでも結果を出す。

そして、その上で本当に行きたい大学へのTransferに挑戦する。

これも、これからの時代には非常に現実的なルートだと思っています。

高校生の時点では、

「日本の高校生」「英語力はまだ十分ではない」「College Tennisの実績はゼロ」

だった選手が、アメリカの大学で1〜2年過ごせば、

「アメリカの大学で実際にプレーした実績がある」「英語でコーチと直接コミュニケーションが取れる」「アメリカの大学でのAcademic Recordがある」

選手になります。

大学コーチから見れば、Recruitingにおける判断材料は大きく変わります。


ルールが変われば、進学戦略も変える必要がある

今回のNCAAのEligibility変更を、

「大学で5年間テニスができるようになった」

とだけ捉えるのは、私は違うと思っています。

確かに選手にとって選択肢が増える面はあります。

しかし同時に、Recruitingの競争相手が多様化し、高校生が直接Roster Spotを獲得する競争はさらに厳しくなる可能性があります。

だからこそ、日本人選手には、

-英語を早く準備する。

-ジュニア時代から一般大会にも挑戦する。

-ジュニアの枠を超えた実績を作る。

-大学コーチとのRecruitingを早く始められる状態を作る。

-自分を必要としてくれる大学をしっかり見極める。

-そして必要であれば、大学に入って実績を作ってからTransferで次のステップを目指す。


こうした柔軟な考え方が、これまで以上に必要になると私は考えています。

ルールそのものを私たちが変えることはできません。

しかし、ルールが変われば、それに合わせて準備の仕方を変えることはできます。

大切なのは、新しいルールを正しく理解した上で、その中でどうすれば日本人選手に一番良いチャンスを作れるのかを考えることだと思います。


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